HyperLolia in Novel 02
Written and Presented by Eren=fox.


地下監獄。闇に住まいし暗殺者達の隠れ家。

 「きっはははっははははっは。」
不気味な笑い声がどこからかこだまする。
あいね・メモクラムは思わず耳を塞ぐ。
それを見たろりあが声をかける。
 「大丈夫よ、怖いのは最初だけ。」
そう言って進みだす。
 「あ、ろりあん。わたしが先頭いくよ。」
フリーテが前衛を引き受ける。

狭い通路を抜け、死刑台のある広い場所へと出る。
 「ねぇ、あれ・・・もしかして・・・」
メモクラムが死刑台を指差す。
 「死刑台、だねぇ。」
あいねが躊躇無く答える。
 「死刑囚の収容を行なっていたんですかね?」
フリーテが崩れかかっている死刑台へと近づく。
 「きはははっはぁ。」
死刑台の後ろから突如インジャスティスが手にしたカタールでフリーテに切りかかる。
 「くっ。」
上体を反らしなんとか回避するが、段差があるためどう考えても後ろに倒れることは明白だった。
 「やらせるかぁ。」
あいねが飛び込むが距離が微妙だ。
インジャスティスがフリーテへ向けてカタールを振りかぶる。
「やばい」誰もがそう思った。
『ザンッ』インジャスティスの後ろに人影が現れ、
インジャスティスのカタールが腕ごと落ちる。
人影はそのまま踊るようにインジャスティスの横に並ぶと、
手を大きく広げるように首目掛けて一閃。
『ガゴン』インジャスティスは死刑台の縁に叩きつけられ、首が体から離れていく。
 「おねぇ・・・ちゃん?」
ろりあが絶望の中から這い上がり、口を開く。
いつか見たあの姉の面影を見たのだろうか。
 「大丈夫ですかぁ?」
すっとぼけた声が響く。状況が理解できなかったのか、天然かはわからないが。
 「違・・・う。」
ろりあの期待は外れたがフリーテは助かったみたいだ。
死刑台に深々と刺さった剣を引き抜き人影がフリーテに手を貸す。
 「あ、ど、どうも。」
まだ心臓がバクバクいってるフリーテは落ち着こうと深呼吸をする。
あいね・メモクラムに至っては言葉も出ないらしい。

 「剣士!?」
放心状態だったメモクラムが、フリーテと共に来る人影をみて仰天の声を上げる。
 「はい、そうですよぉ。」
剣士の舌足らずな口調はどうやら天然のようだ。
 「えっと、ありがとうございます。」
フリーテがやっとの思い出立ち直る。
 「危なかったですねぇ。」
どうもテンポの崩れる喋り方だ・・・。
 「あなたは1人でここに?」
ろりあが周りを見渡しつつ聞く。
 「えーっとですねぇ、さっきまでは連れが居たんですけれど・・・どこ行ってしまったんでしょうかぁ・・・。」
頬に手を当てつつ真剣に悩む。
 「あなたがマイペースすぎて置いていかr・・・んんぅんぐ。もがもが。」
ろりあの拳を咥えるメモクラム。
 「一緒にさがす?ふーちゃんの命の恩人だし。」
あいねが3人に尋ねる。
 「そんなぁ、命の恩人ってわけでもぉ・・・」
 「あー、いいんじゃないかな。どうせこれといった目的あるわけじゃないんだし。」
剣士の言葉が終わる前にろりあが決定する。
 「決定・・・ですね。もたもたしてもいられませんし、早速行きましょう。」
気持ちを切り替えフリーテ先導の元、剣士連れを探しに出る。

 「そういえば誰も紹介してないんじゃ?」
メモクラムがインジャスティスにファイヤーボルトをかましつつ言う。
 「そうだね、私ロリアーリュ。よろしく。」
チャージアロウで飛び掛ってくるネズミをあいねに向かって飛ばす。
 「アイネリア、よろしく。」
飛んで来たネズミを壁に向かってナイスバッティング。
 「フリーテと申します。よろしくお願いしますね。」
天道虫を切り裂き、インジャスティスの攻撃を盾で防ぐ。
 「メモクラム、まぁ気楽に行こうよ。」
フリーテに気が行ってる間にもう一発ファイヤーボルトをインジャスティスへ。
それぞれの自己紹介が終わる。
 「私ぃ、リーンカーネイトっていいますぅ。」
そう言って飛んで来た天道虫を軽々右へかわすと、右手の剣を体ごと回転させ縦に食い込ませ、
地面に叩きつける衝撃で切り裂く。

 「あ、そうだぁ。まだ連れのこと何も話してませんねぇ。」
暫く歩くと、リーンカーネイトが思い出したように口を開く。
 「そうだね、みんな知ってたほうが探しやすいかもね。」
ろりあがリーンカーネイトの話を促す。
 「名前はシーザリス、職業はハンターをやってますぅ。」
 「お姉ちゃんと一緒か。」
あいねが「ほぉ」といった感じで頷く。
『ドカゴォン』派手な爆音。
ハンターのトラップ、クレイモアトラップだ。
 「あっちよ。」
メモクラムがいち早く位置を見極める。
 「急いで!」
ろりあの声がトリガーのように、全員が一気に走り出す。

『ドカゴォン』広場からもう1発。
 「近い。」
フリーテが更に加速。先陣切って様子を見に行く。
 「気をつけて、ふーちゃん。」
 「ろりあん達を信じてる。」
それだけ言うとフリーテは様子も見ずに広場へと滑り込む。
「信じてる」それは、「無茶をする」と言う意味だとろりあはわかっていた。
 「私もいきます、皆さんは最悪の事態に備えてください。」
その場にいた誰もが予想しなかった人物の言葉。
リーンカーネイトが剣を地に走らせ、フリーテの後へと続く。
ろりあ達も広場が見える位置へと急いだ。

 「誰かいますか!?居たら返事をしてください!!」
フリーテの叫び。微かな願いを込めて、彼女は叫ぶ。
 「フリーテさん、無茶だ!引いて下さい。」
フリーテは後ろへと引っ張られる。リーンカーネイトだ。
 「誰か居る、奥に誰か。」
フリーテが呟く、その声にリーンカーネイトに葛藤が生まれる。
「もし・・・もしその人物が・・・」そう考えると居ても立ってもいられなくなる。
しかし、この数のモンスターを相手にするのは無理があった。
2人が飛び込んだ広場には数十匹のモンスターが居た。
今2人の周りに居るのだけでも7匹。
体勢を立て直さなければやられるだろう。
でも、もし奥に居るのが連れだったら?見殺せというの?
悩んでいるリーンカーネイトの目の前に残酷な現実が露わになる。
死んでいる鷹。ハンターの相棒である。恐る恐るその屍骸の頭部の皮膚を見る。
縫った後の傷。一生消すことの出来ない傷。連れの、シーザリスの相棒である証。
 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
リーンカーネイトがモンスターをなぎ倒して奥へと進む。
 「待って!」
フリーテが後を追う。
リーンカーネイトが剣を振るう度に道は開ける。
怒りに任せた剣撃が何時まで持つか分からない、フリーテはそれに備え今は後を追うだけにした。

 「なに・・・2人ともどこいったの?」
あいねが広場の入り口付近に倒れているモンスターを見て声を漏らす。
 「まさか、あのモンスターの群れに突っ込んだの!?」
メモクラムが目の前に広がる群れを指す。
 「多分・・・ね。」
ろりあの表情が引きつっている。
メモクラムが呪文の詠唱に入る。
 「後ろ任されたんだから、しっかり援護しないとね!」
ろりあが構える。
 「あいね?通路のほう任せたよ。」
ろりあがあいねへと声をかける。
 「え?あ、うん。」
『ピィィィィ』ろりあの口笛に反応して、
鷹『サザピー』があいねの後ろへつく。

 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・くっ。」
リーンカーネイトがなんとかインジャスティスのカタールを受け止める。
フリーテに背中を預けて、やっとの戦闘。
 「大丈夫ですか?」
フリーテが背中越しに声をかける。
 「大・・・丈・・・夫。」
切れ切れの声。限界を意味していた。
フリーテは剣を胸の前で、水平に構える。
空を仰ぎ見るようし、全神経を研ぎ澄ます。
地面に巨大な光の十字架が刻まれ、光が溢れ出し天を突く。
『キィィィィィン』耳を突くような、それでいて耳障りでない高音が響く。
その光に触れたモンスターが消滅していく。
 「くぅっ。」
光が消え、フリーテは苦痛に顔を歪めた。

 「見えた!行くよ!!」
ろりあがフリーテのグランドクロスの光を見て、2人を促す。
メモクラムもかなり辛そうだが、なにも言わずついていく。
 「メモすけ、無茶するなよ。」
あいねがメモクラムを見て声をかける。
 「うっさい・・・、あんたこそ・・・非力なんだから、む、無茶すんなよ。」
何時でも強気な彼女。どこまでも強気な性格を突き通す、精神力。
マジシャンの才能は元より有ったのかも知れない。
 「メモすけ重いからな、運ぶ身にもなれっていってるんだよ。」
励みの皮肉。台詞とは裏腹に口は笑っていた。
 「へっ、筋肉にいわれたくないよ!」
同時にファイヤーボールを撃つ。
少し元気が戻ったのか、口調がはっきりしてきた。
『ドゴォン』爆発。
『ピィー』そこに合わせてろりあがサザピーを飛ばす。
あいねは2人に支援魔法をかけ続ける。

 「シーザリス!!」
リンカーネイトとフリーテがようやくといった感じで、人影の場所へ辿り着く。
そこには全身傷だらけのハンターが一人。
 「リン・・・か・・?」
血で目が見えていないのだろう、目の前にいるリーンカーネイトを手で探るように動かす。
 「そう・・・だよ、ごめんね。ごめん・・・ごめん・・・」
泣きながら縋りつく。
 「良かった・・・。」
フリーテが安堵の溜息をつく。
もう3人の周りにはモンスターはいなかった。

暫くしてろりあ達も追いついてきた。
 「ふーちゃん!」
ろりあが駆け寄ってくる。
 「あいねちゃん、彼を助けてあげて。」
ろりあとの生還を喜ぶよりも優先すべきこと。瀕死のシーザリスを助けることだ。
 「わかった。メモすけお願い。」
無理が祟ったのか、途中で力尽きたメモクラムがあいねの背中からフリーテへと渡される。
途中の戦闘はろりあ一人だったのか、その場にヘトヘトと座り込む。

あいねのヒールのお陰で一命は取り留めたシーザリス。
そのシーザリスの話によるとリーンカーネイトが逸れたのではなく、
シーザリスがアイテムを間違えて蠅の羽を使ってしまったらしい。
ろりあ達はあきれて物もいえなかった。
 「すまなかった、俺のせいでみんなボロボロになっちまって。」
シーザリスが素直に謝る。立てる状態ではないので壁にもたれかかったままだが。
 「でもたすかって良かったです。」
フリーテは素直に生きている今を喜んだ。
 「まったく・・・、普通間違えr・・・むぐむぐむぐぐぅ。」
 「ア、アハハ。いや、またお2人が出会えてよかったです!」
ろりあがあいねの口に拳を埋め込みながら引きつった笑顔を見せる。
 「ところでリン、狐はどこいったんだ?」
 「アイテム補充しにいったじゃないですかぁ。」
リーンカーネイトは出合った時の様な舌足らずな口調に戻っていた。
 「そうだったな・・・、あっははは、すっかりわすれてた。」
豪快に笑い出す。
 「あの、その狐さんとの合流場所までご一緒しましょうか?」
心配になってきたろりあはとりあえず声をかける。
 「あー、そろそろ来ると思いますぅ。」
手を顔の前でふりふりしている。何のジェスチャーだろうか。
『バコォンッ』ろりあ達が入ってきた通路のほうの壁が一部砕け、インジャスティスが転がってくる。
その向こうには背の低い胴衣姿の少女と頭に1輪の花を咲かせた商人が1人ずつ。
 「きましたぁ。」
その方向を見つつ、リーンカーネイトが声を上げる。
 「やと見つけた・・・。」
胴衣をきた少女・・・狐と商人がトテトテとこちらにやってくる。
 「クアトさん!?」
商人を見たろりあが思わず声を上げる。
 「ちっす。」
それはろりあ組の財政大臣、クアトその人だった。
 「『ちっす』じゃないよ、クアトがなんでここに?」
あいねが問う。
 「あ、それはわたしが書置き下からだと思う。」
ろりあが答える。
 「うん、書置きあったし、エレンさんがここに来るっていうから着いてきた。」
と、クアト。
 「道でばったり会ったから、ついでに荷物も持ってもらおうかと。」
苦笑に似た笑顔で補足する。ちなみにエレンとは狐と呼ばれてる少女のこと。
 「狐っちぃ、おっそいよぉ。」
リーンカーネイトが膨れっ面で抗議する。
 「まぁまぁ、アイテム配布したら休んでなよ。暫くわたしがモンスの相手してるから。」
そう言って、クアトと共にカートのアイテムを各々に分配する。



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